世界のどこかで。日本人として
記事:事務局カネコ

 イギリスに、ノエル・サッチャー( Noel Thatcher )という選手がいる。
 視覚障害者で、陸上競技の選手である。過去パラリンピックで5つも金メダルを獲得したことがあるそうで、イギリスでは有名な選手のようだ(失礼ながら私は存じ上げなかった)。
 今回、彼はイギリス選手団の旗手も務めた。

 そのサッチャー選手が、 10000 メートル、不本意な結果に終わった、という放送がされていた。
 その画面には、トラックのサッチャー選手を見つめる応援団。
 ふと見ると、その最前列には、日本人らしき女性が映っていた。
「ゆみが心配そうに見ていますね」
と実況アナウンサーが言った。
「ゆみ???」
そう、サッチャー選手の奥様は、日本の方だったのだ。

 そのあと、ゆみさんは競技場のミックスゾーンでサッチャー選手と共にインタビューを受けた。
「良くがんばったとおもいます・・よくがんばりました・・・」
と繰り返して涙を流すゆみさん。
「泣かないで」
と声をかけたサッチャー選手と、カメラの前で抱き合い、キスをした。

 意外なところで意外な形で日本の方に遭遇した。

 今は、世界のどこに行っても必ず日本人がいる。
 当実行委員会会長のマセソン美季はカナダのアイススレッジホッケーの代表選手と結婚をしてカナダに住んでいるし、スタッフの伊藤由紀はドイツにもう 6 年以上暮らし、車椅子バスケのプレイヤーとしても活躍している。

 ドイツでプレイをするカナダのパトリック・アンダーソンやジョーイ・ジョンソン、オーストラリアのトロイ・サックスと、スコットランド留学中のわたしがドイツの体育館で立ち話、なんてこともあるし、イタリアの車椅子バスケットボールプレイヤー ( 健常者 ) に日本のわたしがカナダのチームを紹介して今はカナダでプレイしている、なんてこともある。

 当実行委員会副会長の及川晋平や神保康広がアメリカで長期にわたりプレイをしたり、オーストラリアからのオファーを受けて岩野博選手がプレイをしたり、安直樹選手がアメリカに武者修行に行くこともあった。

 世界はどんどん動いている。
 好むとも好まざるとも、世界はどんどん動いている。

 今必要なことは、その現実を、きちんと把握すること。
 そしてそれに対応しうる「体力」をつけること、そんなことを思った。
 少なくとも、キャンパーの皆さんが世界のどこかに羽ばたいていくときに、しっかりとお手伝いのできる、そんな団体であり続けたい。

 次の4年間で、あなたが、世界のどこかにいるかもしれない。