大会最終日
from 橘 香織

大会最終日。最初のゲームは女子3位決定戦。北京パラリンピックでは5位とメダルを逃したカナダと、同じく北京パラリンピックで日本を破って銅メダルを獲得したオーストラリアが対戦した。
1Q、先に流れをつかんだのはオーストラリア。このクォーターを17−8とリードし、このまま楽に逃げ切ってしまうのではないかという安定感のある試合運びを見せた。
しかし、ハーフタイムを終えてコートに現れたカナダはまるで別のチームのような雰囲気。カナダの伝説、シャンタール・べノアが繰り出す速攻に加え、今大会もっとも印象に残るプレーヤーの一人に挙げられるであろうジャネット・マクラクランの高いシュート力によって、3Qの終わりには3点差までオーストラリアを追い詰めた。
最終クォーター、カナダの勢いは止まらない。オーストラリアのシュートが入らず苦しむ一方で、カナダは勢いそのままにこのクォーターを21−8で圧倒。最終スコアを59-49として、見事銅メダルを獲得した。

続く男子3位決定戦。ヨーロッパ選手権を制して今大会に乗り込んだイタリア。対するは準決勝でオーストラリアの厚い壁を破ることができなかったアメリカ。立ち上がりからペースをつかんだのはアメリカであったが、第2クォーターに入り、イタリアも追いすがるものの、アメリカのセンター、ジョー・チェンバースの活躍もあって前半を23-31で終了。
しかし、後半に入ってもアメリカは主導権を渡さない。強いディフェンスでイタリアのシュートを苦しめ、このクォーターを21-6と圧倒する。最終スコアは71-42でアメリカの強さが光る試合となった。

女子の決勝戦は、近年でもまれに見る名勝負の一つとして記憶に残る試合となった。北京パラリンピック決勝と同じ顔合わせとなったこの試合は、まさに最後の瞬間までどちらが勝つかわからない展開。第1クォーターは14−10とドイツがリードするが、なかなか引き離すことはできない。前半は30-29でドイツがわずか1点のリード。
ドイツはビッグマンのIシューネマン、Mモーネンの2枚看板に集まるアメリカディフェンスのプレッシャーをうまく利用して、フリーになったローポインターが確実にシュートを決めていく。対するアメリカは“New Weapon”CマーレーがアウトサイドのシュートやKリップとのスクリーン&ロールを驚くほど冷静に決めて、ドイツに主導権を渡さない。
後半に入っても点差は開かず、3Qを終えて40−40の同点。残り6秒で54−53とアメリカリード。ファールゲームを仕掛けたドイツに対して、アメリカは集中してフリースローを沈め、55−53と1ゴール差。ドイツもタイムアウトを取って最後のオフェンスチャンスにかけたが、惜しくもゴールに届かず、北京に続いてアメリカが世界を制することとなった。アメリカCマーレーはこの試合25得点、脅威のシュート率71% を記録。ビッグマン2枚を擁するドイツが有利かと思われた決勝戦であったが、徹底的にスレットを抑えたアメリカのディフェンス、そしてピック&ロール、スクリーン&ロールというJキャンプでもおなじみのプレーをこれでもかと展開したアメリカのオフェンスに一日の長があったといわざるを得ない。

今大会を締めくくる男子決勝は、北京パラ金メダルのオーストラリアと、伏兵フランスの組み合わせ。オーストラリアはブラッド・ネス、ジャスティン・エバソン、ショーン・ノリスという3枚看板に加え、若手のラインナップを贅沢に使う余裕の試合運び。前半を終えて45-29とオーストラリアのペースで試合は進む。
後半に入り、フランスも追い上げをみせ、このクォーターは17-14とフランスがとるも、やはり最後はオーストラリアが経験の強さを見せ付けて79-69で世界チャンピオンの座を獲得。

今大会で目立つのは男子も女子もヨーロッパ勢が着実に力をつけてきているということ。女子では予選でオーストラリアを破ったオランダ、ロンドンパラに向けて若手の育成を主眼に置きつつも勝てる試合はきっちり勝って選手に自信をつけさせているイギリス。そして北京パラからメンバーの入れ替えがあっても依然強さを保っているドイツなど。男子もイギリスは相当な強化費をかけて世界中を遠征しているし、決勝に進出したフランス、4位に入ったイタリアなど、世界から選手を集めて強化を図っている効果が徐々に現れている。
日本が目ざすランニングバスケットは、今大会では残念ながら実を結ばなかった。しかし、やるべきことを正しくやり続けていくことが必要だ。ロンドンへ向け、今大会の経験を生かして再起を期して欲しい。