大会8日目 女子順位決定戦 日本VSイギリス
from 橘 香織

昨日の準々決勝でカナダに破れ、5−8位決定戦に回った日本。
最初の試合に勝つと5−6位決定戦へ、負けると7−8位決定戦へまわることになる。
相手は地元イギリス(世界ランク7位)。
2012年のロンドンパラリンピックを見据え、若手選手をイリノイ大学のエリートキャンプに派遣するなど、育成と強化に主眼を置いている姿勢が明確にみえる。今大会も勝ち星こそ少ないものの、準々決勝一回戦の対アメリカ戦では3Qまで接戦を演じるなど、確実に力をつけてきている。

1Q
日本のスタートは(#4)吉田、(#13)高橋、(#8)添田、(#12)井上、(#15)網本。
対するイギリスは(#4)マクレーン、(#7)フリーマン、(#8)ウィリアムス、(#12)ターナー、(#13)サグデン。
(#4)、(#7)、(#12)、(#13)は北京パラリンピックの時のメンバー。当時の(#7)フリーマンは荒削りだがこれまでのイギリスにはない切れ味の鋭いカットインの持ち主である。また(#8)ウィリアムスは2009年からイギリス代表入りを果たしているが、まだジュニアチームでもプレーしている若手有望株の一人。

日本はカウントでオールコートプレス、ノンカウントでハーフコートディフェンス。イギリスのディフェンスはトップにビッグマンをおく、昨日のカナダと同じスタイル。日本の攻撃の起点に対してプレッシャーをかける作戦だ。

互いにシュートが決まらないまま、残り6分で(#8)添田が早くも2回目のファール。 スコア2−4。残り
5分、日本はリズムを変えようと(#8)添田、(#13)高橋、(#15)網本を下げ(#5)増子、(#9)上村、(#6)浦元を投入。
日本はこれまでの試合で(#9)上村を入れた場合はオールコートプレスをせず、ハーフコートディフェンスをしくことが多かったが、今日の試合ではカウントでオールコープレスを継続。(#9)上村はマークにつかずに最初から最終ラインに立ってプレスブレークから抜けてくるイギリスの選手のレイアップにプレッシャーをかける形をとった。イギリスにしたらいつも誰か一人はフリーになっているのだが、レイアップにいこうとすると上村の高さでつぶされてしまうのでアタックがかけられない。変則的なプレスが意外に効果を発揮する形となっていた。
残り3分、(#12)井上が自らのシュートのオフェンスリバウンドを拾ってファールをもらいながらもねじ込む!ワンスローもしっかり決めて、これで7−6と逆転。
その後、互いにシュートまでいくも膠着状態。1Qは9−8で終了。

立ち上がり、ちょっと審判の笛のなり方が地元イギリスに有利かなと思われるところが何回かあった。順位決定戦になると、国際大会での経験があまりない審判があてられることが自然と多くなる。審判の笛一つで試合の流れが変わることは往々にしてある。自分でコントロールできる範疇ではないが、試合に影響を与える重要な要素の一つとして考えておくことは必要だ。

2Q
日本はスターティングラインナップに戻す。イギリスは(#6)ストレンジを投入。これまで4度のパラリンピックに出場している、イギリスで最も有名な女子選手だ。
(#8)添田が左サイドでボールをコントロールしているところに(#12)井上が飛び込みエルボーからのシュートがヒットして11-8!この日、なかなかアウトサイドシュートが決まらない井上だったが、これでリズムをつかめるか。残り7分、ルーズボールを追った(#8)添田が痛い3つ目のファール。この判定も微妙なように思えた。これをうけて、再び(#5)増子、(#6)浦元、(#9)上村を戻し(#12)井上、(#4)吉田とののセットへ。

しかし、(#12)井上がプレッシャーを受けつつタフショットを打つなど、なかなか日本は得点を重ねられない。残り4分、高さのあるディフェンスで存在感を出していた(#9)上村にかえて(#8)添田を戻す。(#8)添田、(#5)増子、(#6)浦元、(#12)井上、(#4)吉田の速い5人でノンカウントプレスをかけリズムを変えようとする日本。しかし、クロスピックからのアタックを一つの攻撃パターンとして持っているイギリスは、アウトナンバーの状況をうまく作り出していくことでかえってリズムをつかんだように見えた。
残り2分、(#12)井上も3つ目のファール。ここで(#12)井上、(#8)添田、(#6)浦元を下げて(#11)土田、(#13)高橋、(#15)網本を投入。イギリスも(#7)フリーマンをいったんさげて(#12)ターナーを投入し、ビッグマンを2枚というラインナップ。
その後も日本はプレスを継続するが、最後でファールをふかれてフリースローを決められるという展開は変わらない。

3Q 
日本はスタートのラインナップに戻す。イギリスはビッグマンの(#15)マシューズを入れてインサイドの勝負に出る。
その(#15)マシューズの立ち上がり2連続シュートでイギリス18−19と逆転。さらにイギリスはバックピックからのアタックで(#6)ストレンジがレイアップを決め18−21。
残り6分、(#12)井上がオフェンスチャージングをとられて4つ目のファール。交代かと思われたが、まだベンチは動かず、オールコートプレスを継続。日本もここが勝負と踏んでいるのだろう。
残り4分、得点は3点差ビハインドのまま。ここで(#8)添田をさげて(#9)上村を投入。直後、(#5)増子のシールから(#9)上村がシュートを沈め、20−23。しかしそのあとのオールコートプレスをイギリスがきっちりブレークして20−25と5点差へ。
残り3分で(#6)浦元・(#12)井上をさげて(#13)高橋・(#15)網本を入れる。イギリスも(#7)フリーマンを戻して網本のスピードに対応させる。
残り2分、(#9)上村が再び頭越しにきめて24−25と迫る。その後も互いに譲らず、3Qは26−27で終了。

4Q
日本はこのクォーターの始めにカウントプレスをいったんひいてハーフコートディフェンスへ。立ち上がり早々(#8)添田のトップからのカットインが決まり、28−27で逆転!このまま波に乗っていけるか?
残り8分、(#4)吉田にかえてルーキー(#9)萩野投入。イギリスは疲れの見える(#15)マシューズをさげ(#10)コンロイをいれる。
イギリスは(#15)網本・(#12)井上にはボールが入ると同時にジャンプしてプレッシャーをかけてくる。日本はそれを逆手にとって、トリプルスイッチでトップからのヘルプが下がったところに(#8)添田がカットインするという3対3の形が見えてきた。

しかし、最終的に流れを掴んだのはイギリス(#7)フリーマンのファールをもらいながらねじ込んだシュート。その後のワンスローも決めてイギリスが28−30と逆転。
残り6分、イギリスの伝説(#6)ストレンジがダイブの裏から落ち着いて決め、イギリスが日本を突き放しにかかる。日本のターンオーバーから再び(#6)ストレンジがレイアップを決め、28−36とイギリスが8点にリードを広げたところで日本たまらずタイムアウト。
日本はこのタイムアウトで(#9)上村、(#6)浦元、(#5)増子を戻し(#4)吉田、(#12)井上のセット。激しくプレッシャーをかけるも(#4)吉田が4つ目のファール。
残り2分、(#6)ストレンジがカットインからシュートをねじ込み28−40。伝説のプレーヤーが新たな伝説を刻むシュートで日本の息の根を止めた。

日本は最後までメンバー交代を駆使して粘りを見せるも、最終スコアは31−46でイギリスが勝利を収めた。
若手の力を前半でうまく使いつつ、勝負どころでベテランの安定感を発揮させて見事なスパートをみせたイギリス。ロンドンへ向けて、若手のさらなる成長が楽しみでもあり、日本にとっては脅威が一つ増えたといわざるを得ないだろう。
この結果、イギリスは5−6位決定戦へと進みオランダと対戦。一方、日本は7−8位決定戦で中国と今大会最後の試合に臨むこととなった。