【No.57】障がい者スポーツにおける女性スタッフのための勉強会 パイロットプログラム

参加者感想なども含んだレポートフルバージョンはこちらから

東京パラリンピック終了まで活動を抑えていたJキャンプですが、リスタート企画の一つとして、「障がい者スポーツにおける女性スタッフのための勉強会」を現在計画しています。2021年10月から2022年2月にかけてそのパイロットプログラムを開催し、Jキャンプから声をかけさせて頂いた方々12名が参加してくださいました。

対象者は性自認が女性の方。女性同士だからこそ話しやすかったり、分かりあえたり、学びあえたりする、そういう空間を体験して欲しいと女性のみを対象としました。

参加者の皆さんは何らかの形で障がい者スポーツに関わっている方々でしたが、それぞれ関わるスポーツ、立場、経験、個人的な環境は異なり、バラエティ豊かなグループとなりました。

3つの試み

コロナ禍という状況に加え、仕事、家事、育児、介護など時間の制約がある中でも参加しやすいよう、講師の方々のご理解とご協力のもと、以下の3つの試みを行いました。

  • オンライン開催
  • ミュートでの参加許可
  • 欠席者への勉強会録画の共有

勉強会のプログラムゴール&スケジュール

プログラムゴール

「参加者の皆さんがスポーツにおける女性にまつわる問題や多様性について共に考えることを通して、今後の活動に向けて新たなアイデアを得たり、サポートネットワークを構築することでエンパワメントを高める」

スケジュール

① 10月2日  女性差別の現状について考える                           

                   ファシリテーター: 株式会社BorderLeSS 筒井香様

② 10月23日 女性のエンパワメント1 – 声をあげる/意見を言うこと

                    講師:株式会社BorderLeSS 筒井香様                                

③ 11月13日 女性のスポーツ参加(現状、バリア、取り組みなど)       

                    講師:一般社団法人S.C.P. Japan 野口亜弥様

④ 1月8日          LGBTQ+の知識と現場での取り組みを考える(多様性の重視と効果) 

                    講師:一般社団法人S.C.P. Japan 野口亜弥様

⑤ 1月29日      女性のエンパワメント2(ガバナンスコード、 教育の機会、 男性と共に作り上げていくために)

                    講師:城西大学准教授 山口理恵子様

⑥ 2月12日  海外での事例&振り返りとまとめ           

                    ファシリテーター:株式会社BorderLeSS 筒井香様

ゲストスピーカー:Carlee Hoffmann-Shwartz(アメリカ/ドイツ)、Stephanie Wheeler(アメリカ)、Edina Müller(ドイツ)

各回1時間半+30分程度のフリートーク。最終回は2時間+1時間のフリートークで行われました。

第1回 「女性差別の現状について考える」

ファシリテーターに株式会社BorderLessの筒井香様を迎え、女性差別が今現在も様々な場面であるということを知ろう、その問題は個々によって異なることを知ろうという目的で考えていきました。

筒井様がご専門の心理的な観点から「自分の専門家になる」ことや「多視点、他視点」の大切さ、自分らしさである「感情」への気づきなどについてお話をして下さいました。

その後、グループディスカッションを行い、様々な意見やコメントが交わされる中、それぞれ共感したり、異なる視点を新鮮に受け止めたりと有意義な議論が行われました。

第2回:「女性のエンパワメント1ー声をあげる/意見を言うこと」


講師に再び筒井様をお迎えし、自分の可能性を発揮するために出来ることを考えたり、女性が今の自分に自信を持って活動するためのヒント、これからさらに自信をつけ力を発揮するために何が必要かを考えていこうという目的で講義が進められました。

筒井様から「思考の癖」「アンコンシャスバイアス」「自尊感情の高め方」などについてお話をしていただき、皆さんと一緒に考えていきました。その後、グループディスカッションも行いました。

第3回:「女性のスポーツ参加(現状、バリア、取り組みなど)」


講師に一般社団法人S.C.P. Japanの野口亜弥様を迎え、女性のスポーツ参加率をあげるために出来ることや女性のスポーツ参加が女性のエンパワメントにつながる可能性をもつ、ということを考えていくセッションとなりました。

講義では「女性のスポーツ参加が少ない背景」や「女性がスポーツに参加するメリット」「女性の参加を促す取り組みの例など」について野口講師がお話をして下さいました。

以下はセッション中にシェアして頂いたビデオクリップになります。

もし興味があれば是非ご覧ください。

LikeAGirl Gender Bias Against Girls https://www.youtube.com/watch?v=5yLXrWLvwAo 

UN Women #スポーツにジェンダー平等を  https://fb.watch/9Msd5dZzpF/

This Girl Can  https://youtu.be/hMsZ1GBxh6o 

NIKE Dream Further https://www.youtube.com/watch?v=LgFApUkjKZ8 

第4回:「LGBTQ+の知識と現場での取り組みを考える(多様性の重視とその効果)」


この回も一般社団法人S.C.P. Japanの野口様に講師をして頂き、「LGBTQ+の意味について」「LGBTQ+を公表しているアスリートについて」「トランスジェンダーアスリートの規定について」「LGBTQ+とスポーツ参加への課題」「性のアイデンティティについて」「アライについて」など盛沢山のお話をしていただきました。

参加者からは、最近耳にすることが多くなり気にはなっていたが、改めて話を聞くと知らないことが多く勉強になったという声が多く聞かれました。

第5回:「女性のエンパワメント2 – スポーツ庁ガバナンスコード、 教育の機会、男性と共に作り上げていくには」

講師に城西大学准教授 山口理恵子様を迎え、影響力を持つ立場で女性が力を発揮するためにできることや多様性の必要性を考えていきました。講義ではスポーツにおける「ジェンダー平等」「女性活躍」「クォータ制」「女性の分断」「構造の問題」「男女との『共闘』」など非常に興味深いお話をしていただきました。

参加者の皆さんも新たな気づきが多かったのか、フリートークでも多くの質問や意見がかわされました。

第6回:「海外での事例&振り返りとまとめ」

最終回は以下の3つのパートで構成しました。

①振り返りとまとめ

②海外ゲストによるパネルディスカッション

③フリートーク(希望者)

①は再び筒井様にファシリテートをして頂き、これまでインプットしてきたことから自分が学んだこと・気づいたこと・感じたことをアウトプットし、それを他の参加者と共有するという作業をしました。

その後、「学びから変化を生もう」という観点から、「心理的盲点」に気づき、意識化して行動を起こすことが大切ではないかというお話をして頂きました。

最後に参加者全員が、勉強会を通して意識化したこと・これから意識化してみようと思うことをZoom上のチャットボックスに書いて共有をしました。

②ではイリノイ大学女子車いすバスケットボールチーム出身の3名(Carlee Hoffmann-Shwarz, Edina Müller, Steph Wheeler) を招き、スポーツとジェンダーについてのパネルディスカッションを行いました。

とても面白い内容でしたので、当法人ホームページで後日内容を公開できたらと考えています。

③は完全フリートークの時間とし、残れる方でざっくばらんに話をしました。海外ゲストの話から広がった話や、ご自分の活動報告、参加者同士で是非一緒に何かやりましょう、というようなお話が挙がっていました。

参加者の声

後日、参加者の皆さんにはアンケートにお答えいただき、多くの方々が勉強会の内容に満足したと言ってくださいました。

また「3つの試み」のおかげで、諦めずに最後まで参加することができたという回答も多く頂きました。

さらに女性同士で話すことの大切さを再認識してくださったのと同時に、ジェンダー問題は女性だけでなく男性に理解してもらい、ジェンダーに関わらず共に考えていく必要があることを参加者の皆さんと共有できたことは意義深いと考えます。

その他、参加者の皆さんからは以下のような感想を頂きました。

「自分の無意識での思考のクセや、これまで知らなかったジェンダーやスポーツの歴史を学ぶことができました。今回学んだことを、少しでも実生活に活かしていけたらと思います。」

「女性を主張することの意味があるのか/主張しても良いのか考えたこともありますが、そもそももっと深いジェンダー問題であり、社会へのアプローチをかけていくべきことなんだと気付かされました。」

「スポーツの現場にいる女性たちと、ジェンダーについて意見を交わせたことがとても刺激的でした。世代も置かれている環境も様々な中で、葛藤しながら日々進んでいるということを知ることができ、とても心強かったです。最後に呼んでくださった海外ゲストのお話しも本当に興味深かったです。」

今回講師をして頂いた皆さまには、大変興味深い講義内容に加え、欠席者への録画の共有の許可やフリートークへのご参加など、無理なお願いにも関わらず快くご協力して頂いたことに心より感謝申し上げます。

また、このパイロットプログラムに参加者としてご協力いただいた皆さんにもこの場をお借りして感謝申し上げます。

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ABOUTこの記事をかいた人

Jキャンプスタッフ、通訳・国際事業担当。 日本にて車椅子バスケ各種大会や車椅子バスケ、車椅子ラグビーなどのキャンプで通訳として活動したあと渡米。 イリノイ大学大学院でスポーツマネージメントを専攻しつつ、同大車椅子バスケ部のマネージャー、アシスタントコーチをつとめる。 2008年夏に卒業後、現在はカナダ・バンクーバーのBC Wheelchair Basketball Societyにてプログラムコーディネーターとして働く。 また、これまでも趣味としてプレーをしてきたが、障害が無くとも公式戦に出場ができるカナダでプレーヤーとして活動しはじめる。 2011年に行われたU25女子世界選手権大会には日本代表チームのACとして参加。