NPO法人 Jキャンプ

 レポート&コラム

No.10エルサルバドルエルサルバドル〜その1 障害をもつようになったのは・・・?
2004.07.12. 岩佐 雅恵/齋藤 幹剛
はじめに

車椅子バスケプレイヤー、ファンのみなさんこんにちは!!

写真1

はじめまして。よくこのサイトを見させて頂いております。「海外スポーツ紀行」では、世界のいろいろなスポーツイベントが紹介されていて、いつも興味深く読ませてもらっています。しかし、少々気になっていたことが・・・。紹介されている国は、いずれも福祉・医療先進国。「エルサルバドル」という、世界的に教育水準の高い日本人ですらどこにあるかわからないような、小さな途上国(今は中進国になりつつあります)で青年海外協力隊員として活動する私達にとっては、「他の世界も皆さんに知って頂けたら、、、」(我々もそんなに沢山知っているわけではありませんが)という思いがありました。

そこで管理者の方にお話しをしてみたところ、是非とも!と親切にお返事を頂いたので、僭越ながら、少しずつですが、当国および周辺国の紹介をできる範囲でさせて頂こうと思います。お付き合い頂けたら幸いです。

同時に、皆さんの中でこれを見て、読んで何か思うところ(感想・質問・意見・抗議など、、、)がありましたら、是非お聞かせ頂きたいなと、思います。

※エル・サルバドル共和国  〜簡単な紹介〜
写真2

中米に位置する。(地図で探してみてください!)人口約650万人、面積約2万K・(四国とほぼ同等)。ラテンアメリカ諸国で一番高い人口密度を持つ。公用語スペイン語。通貨USドル。気候は熱帯のサバナ気候(雨季と乾季)。特に目立つ観光資源、天然資源、農林水産資源なし。内戦時より流出しつづけている200万人とも言われるUSA在住サルバドル人の家族送金が国家歳入を数倍も上回り、それが膨大な貿易赤字を埋めて経済が成り立っている。国民一人あたりGDP約2000ドル。

オリバー・ストーン監督の映画「サルバドール」にもあるように、1979−1992まで凄惨な内戦が続く。戦後の治安は徐々に安定してきているが、終戦による武器の流出、2001年の2度の大地震による難民の増加、さらに最近では米国不法入国・滞在の強制送還者増などにより、犯罪多発傾向。ラテンアメリカではコロンビア・グアテマラに次ぐ危険国といわれる。当国で活動する協力隊員もスリ・置き引き・空き巣・強盗(拳銃・刃物類)・拉致監禁・ひき逃げなどの被害にあっている。


エルサルバドル 日本
男子
 銃で撃たれて  9名
  (内戦3、強盗6)
 交通事故    4名
 労働災害    3名
 疾病(ポリオ) 2名
 医者の処置ミス 1名
 先天性     1名
 
 交通事故    114名
 労働災害     38名
 疾病       18名
 スポーツ事故  10名
 先天性      5名
 転落       4名
 震災       1名
女子
 疾病(ポリオ) 6名
 交通事故    2名
 その他疾病   1名
 分娩ミス    1名
 震災      1名
 

さて、初回は、スポーツイベントやクリニックの紹介、という今までの流れとは少し離れてしまうかもしれませんが、エルサルバドルにおける車椅子スポーツ選手が障害を持つようになったきっかけ、原因を調べてみて、日本のそれと比較し、その背景を少し考えてみたいと思います。

エルサルバドルでは、比較的コンスタントに競技に参加している選手を対象に調査してみました。日本のデータとしては、手元にあった車椅子バスケットボール日本選手権のパンフレットを元に、障害原因をまとめてみました。平成13年と少し古く、しかも競技も車椅子バスケのみ、男子だけのデータなのですが・・・。

私がここで述べるまでもなく、見ていただければ違いはおわかり頂けると思いますが、ご参考までに、昨年まで国立リハビリセンターに勤務していた作業療法士隊員に伺った「日本とエルサルバドルの差」について、彼女の文を引用して紹介したいと思います。

(※)は、私の補足説明です。


1. 日本の比べて重症患者が少ない
     (脳卒中・脳性麻痺・交通事故・その他外傷)

これは救急救命医療の差だと思っています。日本の医療は世界一、救急車も平均5分で到着すると言われています。本来は死亡してしまうようなケースも優れた救急救命医療によって命だけは救われるわけです。ただし重篤な障害を残して。エルサルバドルの場合医療も発展していないし、救急車は来ない、第一、家庭に電話なんてない。CRIO(※国立総合リハビリセンター)の患者さんに関して言えば1〜2割の家庭にしか電話がありませんでした。・・・ということは重篤な患者さんは死亡してしまうということです。つまり、重度の障害を残す以前に、生存ができないということであり、生き残るということは比較的軽度の障害を残すような状況であったということです。

変な話、日本の場合「無理やりとにかく生かしている」とでも言ったらいいでしょうか・・・語弊があるかもしれませんが(※誤解を避ける為にあえて記しますが、生命を危険な状態から救う為に常に最善を尽くすのは当然のことです)。

2.銃・ナイフ等犯罪による被害

これは大きな差、日本ではなかなかないですよね。
意外と当事者ではなく、全然関係ないのに事件に巻き込まれて障害を負ってしまうケースが多かったです。治安の問題ですね。

3.若い母親・母親教育・分娩技術

これはYさん(※助産師隊員)ともよく話していたけど、絶対あると思います。日本のように義務教育の中にきちんとした性教育はないに等しいし保健所や産婦人科でやっている「母親教室」もないし。前にも書いたけど就学率が低い分、若い母親が多い。母体が安定していない時期の妊娠出産は母子共にリスクは高いと思います。

あとエルサルバドルには産婦人科医はいますが助産師の資格はまだありません。特に田舎での出産は昔で言う「産婆さん“ちっく”な人」が単に自分の経験で子供を取り上げるので、何らかの緊急事態になった時には対応が出来ません。ま、田舎には病院も車も、そして電話もないんですが。

CRIOでも私の担当の子供達には自宅出産の子がたくさんいました。


写真3

障害者に対するハード面の整備もそうですが、補償・保険制度、雇用、法体系などの整備もまだまだ十分ではなく、安定した仕事を持ち、その後に車椅子スポーツを楽しめるのは、ほんのごく限られた一部の人達だけです。写真(右)の男性のように、交差点やバスの中などで物乞いをして生活する障害者が沢山いますし、援助がなく家から出られない障害者も少なくありません。

以上、簡単に紹介しましたが、みなさんどんなことを感じられたでしょうか?
日本に比べると困難なことは山ほどありますが、スポーツを愛する心は世界共通。競技するときはみんな楽しく、一生懸命やっています!

少し長くなってしまいました。またエルサルバドルよりお便りします。ここまでお付き合いありがとうございました。


写真4写真5
筆者紹介
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