NPO法人 Jキャンプ

 レポート&コラム

No.40 ドイツ・ブンデスリーガ1年目を終えて
2014.04.15. 香西 宏昭

2010年1月にイリノイ大学に編入を果たし、その年大学選手権を優勝。
2011、2012年には準優勝、最後の年の2013年は4位という結果でイリノイ大学生としてのバスケットボールが終わりました。同年5月に卒業式に出て、晴れて卒業をしました!

卒業式後の写真 卒業式に来てくれたチームメート

卒業後、行く道は自分の中で決めていました。行先はヨーロッパ。「ヨーロッパに行ってまだまだ挑戦し続けたい。」その気持ちしかありませんでした。
なかなかチームが決まらないまま7月を迎えました。7月の中旬にBG Baskets HamburgのコーチのHolger Glinickiからメールで「ハンブルクに来ないか?」というお誘いを受け、
そこから話はとんとん拍子で進み、BG Baskets Hamburgへの入団が決まりました。

☆☆ドイツ行き決定!!!!☆☆
期待と不安が入り混じる中、9月に渡独をしました。チームにはロンドンパラリンピックのドイツ女子代表選手がAnnika ZeyenやGesche Schunemannを初め4人、男子オランダ現代表が2人、チェコ出身の2メートル超のセンターがいます。そして、Holger Glinickiコーチはドイツ女子代表のヘッドコーチを長年務めています。

試合前の写真
RSC Rollis Zwickauとのホームゲーム

しかし、他チームも強豪!北九州チャンピオンズカップに何度か出場しているRSV Lahn-DillにはJキャンプにも講師として来日してくれたSteve Serioやアメリカ代表の主力Mikey Paye、RSC Rollis Zwickauにはイギリス代表が3人もいます!
ドイツ代表選手を始め、ラトビア、フィンランド、スウェーデン、ベルギーの代表選手がリーグ内にいます。今シーズンのブンデスリーガはヨーロッパ内でも一番激しいと言われる程でした。その中でバスケットができたことはとても幸せなことだったと思います。

スティーブとマイキー 左はアメリカ代表のMikey Paye、右は2010年のJキャンプに講師として来日してくれたSteve Serio

イギリス代表3人 左からGaz Choudhry、Matt Sealey、Abdi Jama、三人は共にイギリス代表

私も含め、今年BG Baskets Hamburgチームに新しく加わった選手は7人もいました。主力組が何年も共にバスケットをしてきているチームが多い中で、新チームのBG Baskets Hamburgにとっては厳しいシーズンになることが予想されました。
新チームということもあってか、勝てる試合でうまく機能しなかったり、格下相手に手こずるという場面が何度かありました。それでも新チームということを言い訳にはもちろんせず、どうすれば自分たちの今の100%が出せるかを考え話し合いながらシーズンを過ごしました。

☆☆ドイツの車いすバスケットボール☆☆
ドイツの1部リーグは全10チーム。ホーム&アウェー方式で全チームと2試合ずつ、計18試合を9月の終わりから2月の終わりまでの間にします。その上位4チームはリーグ戦が終わった後のプレーオフに進出。そこで優勝決定戦を行います。下位2チームは、2部の上位2チームと入れ替えられます。かなりシビアです。今年のBG Baskets Hamburgはプレーオフ進出を目指していたのですが結果は5位と、あと一歩届きませんでした。

また、上記でも書きましたが、ブンデスリーガにはたくさんの外国人選手が在籍しています。これは、ブンデスリーガに外国人枠数の制限が無いことからこういう環境になっています。他の国では1チームにおける外国人枠数が限られているというルールを持っている国もあります。
ドイツはリーグ戦とはまた別でドイツカップ戦というものもあります。これは、1部、2部というディビジョンを度外視して開かれる大会です。元旦に日本で開かれるサッカーの天皇杯のようなものですね。リーグ戦だけではなく、こういう試合もあるのがドイツの面白いところかなと思います。ちなみにBG Baskets Hamburgは準々決勝でLahn-Dillに敗れました。

☆☆持ち点ルールも少し違います!☆☆
持ち点は国際ルールや日本ルールでは5人の持ち点の合計が14点以内でなくてはいけません。しかしドイツでは14.5点以内というルールです。
また、女子の選手が一人コートにいると全部足した合計の点数から1.5点引かれます。このルールによって、持ち点の高い選手を多く出し、持ち点の低い女子選手を同時に出すなどの戦略が使えます。激しい試合が増える反面、男子のロークラスのプレーヤーが育ちづらいという弊害もあるそうです。
更に、20歳以下の選手は持ち点が1点マイナスになるそうです。アメリカのジュニアリーグとはまた違った視点から若い選手を育てる事への試みかも知れませんね。
また、健常者の参加も認められています。持ち点は4.5点です。健常者がチームを引っ張っている、というようなチームもありました。

健常者のニコ
BG Baskets Hamburgの#8Niko(写真:右)はチーム唯一の健常者プレーヤー

☆☆ブンデスリーガはプロリーグではない!☆☆
以前、「ヨーロッパではプロとしてバスケットができる」、と聞いたときリーグ自体がプロなのかと思っていましたが、それは勘違いでした。
リーグ自体はプロではありません。実態は、各チームにプロ契約として雇われている選手がいる、という事です。プロ契約をしていない選手はそれぞれの仕事をし、仕事を終えてから練習に参加し、週末の試合に出る、というクラブチーム方式を取っています。
多くの場合はプロ契約を結ぶのは外国人選手で、ドイツ人の選手でプロ契約を結んでいるという事例は聞いたことがありません。
チームによっては完全プロ契約のみというチームもヨーロッパ内にはあるかもしれませんが、それはごくごく稀なケースで、基本的にはクラブチームの中にプロ契約者が数人いる、という形を取っているようです。

☆☆1年目を過ごしてみての感想☆☆
世界のトップクラスの選手が集まるドイツリーグはかなりフィジカルで、当たりの強い選手が多いです。そして、審判もあまり吹かないので強いフィジカルの中でプレーをする経験をたくさん積めたことはとてもプラスだと思います。ファールだ!と文句を言わずにそれでもプレーし続けることは世界選手権やパラリンピック等の試合でも必要となってくるかもしれません。
そしてやはりヨーロッパ。大きな選手がとても多いので、その高さに対抗するために何をするか?パスを出す手、タイミング、パスの種類、フェイク…色々と勉強になります。
また、一番の驚きだったのは観客の数です!Lahn-DillやZwickauの試合となると千人以上の人が集まったりすることもあるそうです!!会場ではビールやホットドッグなどが売られていて観客たちは試合を肴にビールを楽しんでいます。

LahnDill戦
RSV Lahn-Dillの本拠地Wetzlarでのアウェイゲーム

ヒロとスティーブ
試合直後からビールを飲み始める選手は少なくありません!(笑)

現段階では来シーズンのプレー先は決まっていません。またこれから探していかなくてはいけません。ですが、まだ引き続きヨーロッパでプレーしていきたいと思っています!!!
(写真:伊藤真吾/Jキャンプ)

筆者紹介
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