【No.46】イギリス大学選手権を観戦して思ったこと

2015年3月9日(日)にイギリスで、Wheelchair Basketball University Championship 2015(大学選手権)があるとJキャンプの事務局長の金子さんにお聞きし、観戦をしに行ってきましたので、ご報告します。

私は、以前Jキャンプのファンダメンタルキャンプのボランティアスタッフや、健常者の参加も見られるようになった今こそ車椅子バスケットボールがもつ本当の魅力に迫りたいという企画があると知り、ドイツ研修「障がい者スポーツとしての車椅子バスケットボールを考えるinドイツ」に参加してきました。

その後ドイツのケルンに行き、キックオフトーナメントを見学したり、健常者が全公式戦に参加できるドイツの車椅子バスケットボールの歴史についてのお話を伺ってきました。Jキャンプのスタッフの方、現地の方とお話をする中で、知ること、学ぶものは多くありました。例えば、ドイツは障がい者のみならず、健常者もうまく融合して車椅子バスケットボールを行っていて、そのような国の障がい者スポーツの現状や車椅子バスケットボールについて知識を得ることが出来ました。日本以外のことを知ったからこそ、考え方の幅が広がり、地域の中での取り組み、障がい者スポーツを身近で誰もが楽しめるスポーツとして広がること、またもっと気軽に障がい者スポーツを知るきっかけを提供できる場や環境を整えていけたら良いな、など自然に考えるようになりました。

この学びを踏まえ、イギリスの大学選手権があると知り、イギリスの第2の都市、バーミンガムに行きました。最寄りの駅からウスター大学のあるWorceste Foregate Street駅まで乗り換えなしの1時間ほどで着きました。そこから徒歩で20~25分ほどで着いたと思います。チケットは見ての通り大雑把な情報しかなく、BIRMINGHAM STNSからWORCESTER STNSと書いてあるだけで、出発の駅等は書かれていません。そして、1時間に1本ほどの本数しか電車がありませんでした。大学の体育館とは思えないくらい大きく、すぐにわかりました。また、いろいろな大会等も行われているようで、車椅子バスケットボールの選手が写った大会ポスター等もアリーナの前にありました。そして、この体育館はイギリス代表の強化拠点にもなっており、合宿等も行われているそうです。

ウスター大学までのチケット
ウスター大学 体育館

イギリス大学選手権は、去年の2014年から始まり、今回は第2回目でした。Worcester University Arenaで行われ、昨年度の参加校は5校で今年度は9校の予定でしたが、12校に増えていました。そして、Pool A~Pool Dまであり、3コートで試合が行われていました。試合時間は、5分の4クォーター、試合間は2分、審判は2人でした。去年の参加の情報によると、障がいのある学生4割、ない学生が6割でした。今年も同じような割合のように見えました。

試合を観た印象として、会場にいる全ての人が車椅子バスケットボールという競技を楽しんでいました。試合に出ている人、出てない人、観ている人、すべての人が会場の雰囲気を作り、みんなでやっている感じがすごく印象的でした。オープンな雰囲気で、拍手や笑い声、応援ソングも鳴り響き自然にその雰囲気に私も飲み込まれていきました。コートサイドには、椅子が並んでおり、そこで観戦する人やコートサイドに寝っ転がって観ている人、自然体でした。チームの中には、「みんなで頑張ろうというような始めたばっかりのチーム」「優勝をねらうようなチーム」と様々でありましたが、その中にも「楽しさ」があり、また「トーク」をすごく行っていた印象があります。

試合の中で、私が特に良いなと思ったことが2つあります。1つ目は、1人の女性の選手がファールをもらい、フリースローになりましたが、その選手はフリースローが届きませんでした。チームの中で「ドンマイ」や「一本」「次―!」というような声掛けはたくさん聞きますが、チーム以外の観客、敵チーム等が拍手や声掛けを行っていて「シーン」とはならず、逆に盛り上がっていました。そこで私は「素敵だなー」と感じました。その場にいて温かい気持ちになりました。

2つ目は、Worcester大学の選手で、車椅子もこぐのがやっとのような重い障害をもった選手がいました。この大会は、私が見た試合の中ではすべての選手が出場していて、その選手も試合に出ていました。出場するときも堂々としており、「俺に任せろ」というような雰囲気を感じました。その選手は、ディフェンスには入らずに、それ以外のチームメイトが4人で懸命に守り、その選手はオフェンスにだけ参加していました。3秒にはならない位置にスタンバイをしていて、その選手を楽にシュートを打たせるために4人が連携し、何度もシュートチャンスを作っていました。その中で良い感じにパスが回り、良いパスがきて、「スポッ」とシュートが入った!!!!のです。その時の会場の盛り上がり、選手の嬉しそうな笑顔、ガッツポーズは今でも思い出すと鳥肌が立ちます。拍手や声援、口笛は長い間会場に響きわたっていました。

シュートが入った瞬間!!

試合終了後には、ハイタッチや抱き合って喜びあっていました。健常者と障がい者が一緒にプレーするためには、自分がとれるだろうと思ってパスをしても障がいの重い選手や障がいの特性によって難しいということも考え、相手に取りやすいパスを考えなくてはなりません。健常者、障がい者と分けることはなく、一緒にいることで自然に考え、行うことが出来る環境だなと思いました。障がいがあるかないかではなく、車椅子バスケットボールという競技を通して、自分の活躍する場、その場で結果を出すことで自信にもなり、その自信がいろんな可能性を引き出していけるのではないかと思いました。車椅子バスケットボールという競技に限らず、1つのスポーツをやることで障がいがあるか、ないかというのは壁にはならず、それが普通で、自然なのだという感覚を持ち、特に深く考える必要はないなと私は感じました。もし何か不便なことがあるのならば、平等になるようなルールを健常者と障がい者がお互いに考えていけるような環境を作っていければよいと思いました。

イギリス・ジュニア代表のMathew Fodenコーチ、イギリス女子代表のRobyn Love選手と写真を撮って頂きました。
休憩時間はみんなでバスケ

私は障がい者と健常者の混合チームでプレーすることで、障がい者の参加の機会が奪われるのではないかと心配でしたが、そういうことは全くなく、逆にお互いに良い刺激を受けながら健常者と障がい者がうまく融合し、プレーをしていました。車椅子が足りていないチームもあり、試合のないチームから借りている光景も見られました。チームによっては、応援ソングを歌いながら盛り上がっていて、大学のタオルやうちわを作って振り回している光景も見られました。また、大学のアリーナでやっていることもあり、家族や大学生らしい人達が足を止め、観戦している様子が見られました。

決勝戦では、イギリス車椅子バスケットボール連盟から応援グッズが配られ、全員で決勝を観戦していました。イギリス車椅子バスケットボール連盟を中心に、選手、スタッフ、会場にいるすべての人が大学選手権を盛り上げ、みんなで作っている大会という印象を受けました。このような活動は大会の継続や今後の活動へとつながっていくと感じました

日本と諸外国では、文化も違えば考え方も異なります。そのため、日本で同じようにやることはとても難しいですが、楽しむことは、文化や障害の有無も関係なくできることなのだと改めて思いました。また、選手が楽しんでやっていることで、会場を巻き込み、一体となって大会を盛り上げているように感じました。多くの人に愛され、車椅子バスケットボールというスポーツが広まっていくためには、一生懸命やっている中にも楽しみを忘れてはいけないと思いました。

最後に、少し話が変わりますが、健常のスポーツなら「本気でバスケットボールをやりたい」と思えば高校、大学といった一番心も身体も成長する場で、強化を行いアスリートが育っていくというような環境が日本にはあります。しかし、障がい者スポーツではなかなかそのような環境はありません。車椅子バスケットボールの場合は、大学ではなくクラブチームに所属し、さまざまな年齢層の選手と一緒に練習します。クラブチームのメリットも、もちろんあります。しかし、私は小学生からバスケットボールをやっていて、同世代の仲間と共に汗を流し練習し、悔しい思いや涙を流し喜んだりした経験が今の自分の自信につながっているので、そのような環境も必要ではないかと思います。私は学生時代、この人には負けたくないといった競争心をお互いに持ち、自分も強くなる代わりに、チームスポーツなのでチームワークや自分のおかれた立場、役割を考えながら行っていました。同世代の仲間と、切磋琢磨してやる場があると、より熱い若い車椅子バスケットボール選手が育成されるのではないかと考えました。

なぜここでこのようなことをあげたかというと、アメリカでは、既にそういった環境があり、大学選手権が行われています。そして、今回行ってきたWorcester大学でもそういった取り組みを始めようとイギリス車椅子バスケットボール連盟が動いているという話を伺いました。そのため、今後、そういった取り組みを行う大学が増え、日本にもそういった場が作られることを期待しています。また、Worcester大学の体育館の様子、観客、すべての人が盛り上げている雰囲気を感じ、熱い気持ちになって日本に帰国しました。 このように、車椅子バスケットボールが障がい者だけのスポーツではなくなってきている今、楽しさや魅力も知ってもらい、日本の大学選手権だけではなく、車椅子バスケットボール全体を盛り上げて行けるように私も頑張っていきたいと思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

永山彩夢/ながやまあゆ

2012・2013年Jキャンプin茨城にボランティアとして参加。 2014年にはJキャンプで企画した「障害者スポーツとしての車椅子バスケットボールを考えるinドイツ」にも参加。