NPO法人 Jキャンプ

 レポート&コラム

No.8ドイツRollstuhl Rugby  Bernd-Best-Turnier 2003 in Koeln
車椅子ラグビー(クアドラグビー)“ベアントベスト大会”2003 イン ケルン
2003.06.15. 伊藤 由紀
写真1 期間: 2003年4月11日〜4月13日
場所 :ドイツ ケルン
出場国 :
イギリス、オーストラリア、オランダ、スイス、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギー、ポーランド
参加チーム数 :35チーム

1999年からケルンで毎年行われるクアドラグビーの大会。年々参加チーム数・参加人数は増え、今年は9カ国、35チーム、300人もの参加者が激しくぶつかり合い、この3日間だけで100試合が行われました(それぞれ4、5コートが取れる体育館を3つ使用しました)。手作りのアマチュア組織がこの数を3日間でこなすのはとても大変ことです。200人のボランティア、36人の審判、16のスポンサーがいてこそ成り立った大会でしょう。大規模の大会の割にはアットホームで雰囲気が印象的でした。

この大会の特徴

  • 国代表としてのチームではなく、普段のクラブチームとして参加。チームのままで国外のチームと試合ができる。
  • 3つのレベルに別れているので初心者から代表選手レベルまで誰もが参加できる。
    • 基礎リーグ(10チーム)
    • プロフェッショナルリーグ(16チーム)
    • チャンピオンリーグ(9チーム)
  • 初心者でも多くの試合経験がつめ、国外のチームとも対戦できる。また、国際レベルの試合にも触れられる。
みどころ

チャンピオンリーグ

写真2ベルギー国内にある唯一のクアドラグビーチーム、Flemisch Lionsは、ヨーロッパ選手権で2位となった代表選手の集まりだが、この大会でも選手権で1位になったイギリスの代表選手のいるチームEast Midland Maraudersと決勝で戦う。

両チームともミスのない確実なプレーを続け、観客400人の中で緊迫した均衡ゲームを見せたが、ターンオバーのチャンスを何度か続けてベルギーチームが獲得し、結局45対35で優勝した。

男女混合の大会にも関わらず、女子の参加が少ない中、イギリスチームとして参加した2点の女子選手は、誰よりも激しくぶつかり(車椅子が一瞬宙に浮くぐらい・・・)、スピードのあるプレーで活躍し、この大会の注目の的となっていた。

プロフェッショナルリーグ
初参加のポーランドチームは準決勝で敗れたが、順位決定戦で3位に。決勝戦はデンマークチーム(Copenhagen Ballcrackers)対ドイツチーム(Heidelberger Lions)。結果は31対27でデンマークチームの勝利。ドイツチームの2点選手(四肢切断)のスピードがずば抜けて速く、観客をあっと言わせていた。彼の去年からの進歩はものすごいものだった。

基礎リーグ
写真4ドイツからのクラブチームの参加が多い中、決勝に進んだのは、オーストリアチーム(Wild Foxes)と、スウェーデンチーム (Valhalla Warriors)。結果は53対36でオーストリアームが優勝。ボールがももの上で安定しない初心者の選手はボールを置くためのリングを使用していた。(写真参照)

基礎リーグと、チャンピオンリーグの間には、スピードにしても、ゲーム展開にしても、ものすごく大きな差がありますが、どのレベルの試合もそれぞれ特徴があって見る価値があります。まだ1年も経験のない初心者から代表選手まで誰もが参加できるという国際大会。トップの競技向上だけでなくとにかく多くの人が参加できる環境作りを大切にする主催国、ドイツならではのものでした。

クアドラグビーの簡単なルール説明
バスケットボールコートのエンドラインから逆側のエンドラインまでボールを運ぶことがこのスポーツ種目の目的ですが、その間に相手チームは激しくぶつかり、それを防ごうとします。バレーボールのボールを使い、バスケットボール、ラグビー、アイスホッケーのルールをミックスしたスポーツ種目です。また、クアドラグビーでは、車椅子バスケットボ−ルよりも車椅子のコンタクトがずっと多く、激しくぶつかっても良いというのが特徴です。

  • 参加者:頚髄損傷者、それ以外で腕・手に障害のある者
  • 持ち点:0.5点から3.5点 チーム4人の合計は8点まで(ちなみに持ち点の低い選手の参加を多くするためドイツ国内では7点までで行われています)
  • 各チーム4人ずつコートの中へ
  • 試合時間:8分×4クウォーター
  • ボールを保持しているものは10秒以内にドリブル、またはパスをしなければならない。(プッシュの数は何度でも良い)
  • 15秒以内にフロントコートへボールを運ばなくてはならない。
  • 身体、腕、手などへのコンタクトはファール
  • 車椅子の軸より後ろのクラッシュはファール
  • ファールの場合はペナルティーボックスへ(1分間、または相手が点を入れるまで)など
    −ベアントベスト大会2003の大会要項より−

車椅子バスケよりももっとピックプレーを使い、いかにチームが多くの作戦をこなせるかが勝負の鍵となるようです。

写真4

私もドイツで何度かクアドラグビーの練習に参加させてもらいましたが、体力も必要ですが、ものすごく頭を使う興味深いスポーツだと思いました。「どこをピックして、どう動いて、どうピックして次はまたどうピックして」というのを、そうなるとどうなるか常に先を予測しながら、考えながらプレーをしなくてはならず、しかも激しくぶつけられ、練習後はいつも頭も身体も疲れきっていました・・・そのおかげで、車椅子操作、ピックのかけ方、状況判断などすごく勉強になりました。

 皆さんも、もしクアドラグビーを見る機会がありましたら、選手の動きを是非観察してみてください!!
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