NPO法人 Jキャンプ

 レポート&コラム

No.36
ロンドンパラリンピック ポーランド代表HC兼プレイヤー Luszynski選手にインタビュー!
2012.12.30. 金子恵美子

今年10月、北九州チャンピオンズカップに、トルコのガラタサライのメンバーとして来日していたPiotr Luszynski選手(39歳)にインタビューしました。
Luszynski選手はロンドンパラリンピックのポーランド代表の2大センターのひとりとしてチームで2番目の得点を稼ぐのみならず、なんとHCも兼任するという離れ業を見せました。
ロンドンでは、息を切らしてベンチに戻り、そのままiPadなどを使って選手に指示を出す姿を、井上雄彦先生が驚いてツイートしたりもしていました。
そんなLuszynski選手に、ポーランドのことを中心に伺いました!


1)ポーランドの国内の車椅子バスケットボールに関する情報が全くないのですが、競技人口はどのくらいなのですか?

1部リーグには5チーム、2部リーグには4チームありますが、ようやく80名弱の選手がいる程度です。

2)Luszynski選手やポーランドのトップスコアラーであるFilipski選手は共にこのガラタサライでプレーをしていますが、海外でプレーをする選手は他にも多くいるのですか?

おそらく6名です。多いとは言えないと思いますが、そもそもの選手が少ないことを考えると、どうなんでしょう。
国内の環境があまり整っていないので、隣国のドイツにいくなど少しずつ増えています。

3)ポーランド国内にプロ契約の選手はいるんですか?
また、代表選手は国からなにがしかの経済的支援はあるのですか?

国内でプロ契約という形はないですね。
ただ、ポーランド代表として今回はロンドンでパラリンピック初出場を決めたことから、代表選手に対しては、この1年は月額150ユーロが支給されていました。
ただし、パラが終わるまでの1年、ということで、今後どうなるかは今のところわかりません。

4)ヨーロッパはここ数年、ゾーンとして非常に発展を遂げていて、毎回パラリンピックや世界選手権への出場権を獲得する国が変わるほどの激戦を繰り広げていますね。
その中で、ポーランドが初出場の切符をとった理由はどこにあるとお考えですか?

4年前に自分がHCに就任してから、4年間じっくりとやってきました。
正直、国内での環境が整っているとは言えない状況ですが、そもそも非常にコンパクトな集団であることで、むしろ、密度の濃い、チームワークを作り出せたように思っていますし、集中した取り組みができたと思っています。もちろん、Filipski(今回同じガラタサライの選手として来日、ポーランド代表のエースでトップスコアラー)と私がこうしてクラブチームでも同じチームでやってきたということも意味があります。

5)「国内の環境は整っているとは言えない」、とのことですが、その辺りをもう少し教えていただけますか?

まだまだ、はじまったばかり、という状況です。
今も政府に様々な要望を出し、交渉をしているところです。
月額150ユーロでも支払われることになったのもひとつの結果ですし、今後もより良い環境づくりのために動いて行くことが大事だと考えています。

6)今後も引き続き、代表チームを継続したいという思いはありますか?
選手として、あるいはコーチとして、あるいは両方、という離れ業を今後も?

当然です、というか、次の4年も自分が代表をのHCを任されることが決まっていますし、すでに次に向けて動き始めています。ジュニアも担当するので、まだまだやれることがあると思っています。プレイヤーとしてももちろん継続しますよ!

7)最後に、あなた自身のことについて少しお聞かせください。
車椅子バスケを始めてどのくらいになるのですか?

17年くらいになるかな、と思います。
事故で障害を負う前は健常のバスケでジュニアの代表としてもプレイをしていました。
車椅子バスケは、イタリア、ドイツなどずっと海外でプロとしてやってきました。ドイツにいた頃はコーチ兼選手として契約していたので、コーチとプレイヤーを兼任する、ということもかなり長くつづけているんですよ。


〜 インタビューを終えて 〜

今年行われたロンドンパラリンピック、ポーランドは日本を倒して予選を突破、しかし決勝トーナメントでは勝ち星をあげることができず、最後の順位決定戦では、トルコに敗戦、8位で終了しました。

Luszyski選手は39歳。
今尚、選手として海外でプロとして活躍し続けながらも、代表チームの HCとしても選手としてもトップレベルで走り続けるそのモチベーションはどこからくるのでしょうか。さらに、ポーランドの発展のために様々な活動を繰り広げているLuszyski選手とは、その後も話が尽きませんでした。

4年前にガラタサライにインタビューをした時は、スタメンは全員外国人プレイヤーで、当時スウェーデン代表として北京パラリンピックに出場したHaidari選手は
「今はこのチームは国内では負けなしで特殊な状況にありますが、今後これがトルコ全体のレベルアップにつながるような、良い影響を与えられるのでは、とも思っています」
と話してくれました。

ポーランドもトルコもこれがパラリンピック初出場。
しかし両国ともそのロンドンパラの予選ラウンドを突破し、決勝トーナメントに進出しています。
今思えば、ポーランドやチェコなどの選手は、もう10年以上前から隣国のドイツでプレーをしていましたし、ドイツはトルコ移民がとても多く、トルコ人が当たり前にドイツのチームにたくさん混ざっていました。

つまり実はこのようになっていく素地を、個々の選手たちが隣国の土台を利用してすでに作り上げていて、そこに制度や環境が少しずつ追いついてきた、のかもしれません。

ヨーロッパはイタリアやスペイン、ドイツを中心にクラブチームの選手のプロ化が進み、アメリカやカナダ、オーストラリアの多くの選手もヨーロッパのクラブチームと契約しています。

これからもヨーロッパの動きに目が離せません!

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