NPO法人 Jキャンプ

 レポート&コラム

No.30日本国旗 北九州チャンピオンズカップ国際車椅子バスケットボール大会観戦記
2010.10.15-2010.10.17 in 北九州市立総合体育館
2011.02.16. 佐藤 洋平

●大会概要●
2002年8月、4年に一度行なわれる車椅子バスケットボールの世界選手権大会「北九州ゴールドカップ」が、北九州の地で開催されました。 開催にあたっては、「市民による手作りの大会」 「バリアフリーなまちづくり」 をコンセプトに車椅子バスケットを通じて、 多くの市民の力が結集し、 大会10日間で8万人を超える観客を集め、大成功を収めたとのことです。そして,翌2003年から、ゴールドカップの成果を継承し、北九州市が「バリアのないまちづくり」を象徴する大会として、 「北九州チャンピオンズカップ国際車椅子バスケットボール大会」を開催したのです。毎年海外のクラブチームを招待し,日本からはその年の5月に行われた内閣総理大臣杯で優勝したチームが日本代表として参加する大会になっています。今年は第8回目の大会となりました。

大会会場は北九州市立総合体育館,小高い山の上にあり体育館から見える木々がとても綺麗です。
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●体育館から見える景色●

体育館内はコートが2か所ありメインコートとサブコートの2つで構成されています。メインコートには約10000人収容できる観客席があり,サブコートには大会期間中だけ観客席が設けられていました。
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●メインコートで行われた開会式の様子 手前に車椅子利用者優先席が設けられています●

今年の参加チームは,
アジア・オセアニアゾーン パースウィールキャッツ(オーストラリア)
ヨーロッパゾーン RSVラーンディル(ドイツ)
アメリカゾーン ダラスマーベリックス(アメリカ)
日本代表 宮城MAX
の4チームでした。
どのチームも強豪チームでパラリンピックに出場している選手も多く所属しています。
今回特に注目して見ていたのが,今年の8月に開催されたJcamp茨城に講師で参加してくださったスティーブ・セリオ選手が所属しているRSVラーンディルです!!スティーブ選手のプレイが見られると思うと試合が始まる前から幸せでした。

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●アップ中のスティーブ選手●

大会の結果は,応援していたRSVラーンディルが決勝戦でパースウィールキャッツを破って優勝しました。
優勝後にゴールネットを切る姿やセンターコートで優勝を喜ぶ姿には感動しました。

今回大会を見て感じたことは,海外チームの選手のバスケットボールがとても丁寧であったことです。
シュートフォームは美しい『J』を描き,攻守の切り替えも早く,ダッシュからのストップ,ピックアンドロール,2対2,3対3の攻守などJキャンプのセッションで行われていることが正確に行われており,試合中の選手の声もコート内外で絶えることはありませんでした。基礎的なチェアスキルやプレイに関して質の高いものを積み重ねることのできるチームが強いのだと改めて痛感しました。
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●プレイ中のスティーブ選手 シュートフォームが美しいです●

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●カナダ代表でも活躍するジョーイ・ジョンソン選手 体は大きいけど動きはしなやかです●

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●Jcamp茨城の補助講師を務めた佐藤聡選手(#6) 今回は宮城MAXに加わって参加●

海外チームの試合を国内で見る事ができる機会は非常に少なく,素晴らしい試合を観れ充実した時間を過ごせました。しかし,試合を見るだけではもったいないと感じ,普段見れない海外チームや選手の姿を見ようと思い,プレイ以外にも注目して大会を楽しみました。

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●ドイツチームのベンチスタッフ●
ベンチにいるスタッフは,HC・AC・理学療法士・ドクター・技術者(たぶんメカニック)・マネージャー2人…と他のチームと比較してもスタッフの数は最多です。選手に対してのサポートがとても充実しています。

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●ドクター●
選手の調子を見ながら水分を渡していました。

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●理学療法士●

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●試合を見つめるHC●

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●タイムアウト時の様子 HCが輪の中心になり選手に指示を出しています●

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●試合を見つめるベンチの選手●
 スタッフは役割が分担され,組織的な動きをしていました。動きが早く,常に落ち着き無駄のない動きをしていました。ベンチの選手からは大きな声が出ており残り時間のカウントも全員でコールするなど,ベンチの選手も試合に集中し役割をしっかりこなしている姿はさすがだなと感じました。試合に出ている選手だけでなく,ベンチも含めてチームであると改めて感じました。

最後に試合以外の様子です。
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●試合観戦●
日本ではあまり見かけない姿ですね。海外選手ならではだなと感じます。

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●医療スタッフ●
試合中に何が起こるか分からないので,医療スタッフの方が試合を見つめていました。目立たないかもしれませんが,たくさんのスタッフに支えられて大会は成立しているのだと思います。医療スタッフに関しては活躍しないのが何よりです。

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●終わりに●
国際大会に触れることで普段の大会や試合では得られない刺激をたくさん受けることができました。私自身がチームスタッフとして活動していることもあるので,試合だけでなくベンチの様子や試合以外にどのようにチームが動いているのかをみる事が出来てとても勉強になることが多かったです。
大会会場では同じ理学療法士の資格を持つトレーナーの方と話をする機会もありました。その話の中で,もっと若い理学療法士の方が車椅子バスケに関わって欲しい,そんな言葉を聞きました。他のメジャースポーツにはどんどん理学療法士が参戦して選手やチームを支えていますが,確かに車椅子バスケに関わっている理学療法士は少ないと感じます。車椅子バスケに関わるには医学的な知識とスポーツの知識が不可欠であり,その役割を担うことができるのはまさに理学療法士だと私個人は思います。
実際に試合を観たり選手に関わると気付くことですが,肉体的にとてもハードなスポーツです。選手の多くはケガや体の痛みを抱えながらプレイをしています。最高のプレイを発揮したり,長く選手として活躍するためには他のスポーツ同様身体的なケアが不可欠です。むしろ障害を持っていることでより十分なケアが必要であると思います。しかし,選手を支えるトレーナーや医療従事者はまだまだ少なく,選手がアスリートとして活躍し練習や試合に全力を注げるような十分な環境が少ないのが現状です。これからは選手の可能性を最大限に発揮できるよう自分が現場で出来る事をより努力することに加えて,新しく車椅子バスケに関わりたいと思う人が増えるよう自分なりに車椅子バスケの魅力を伝えていきたいと思います。


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