NPO法人 Jキャンプ

 レポート&コラム

No.16日本国旗 ガラタサライ インタビュー トルコ国旗
(トルコのトップチームGALATASARAY[ガラタサライ]にインタビュー!)
2008.11.26. 金子恵美子・宮本有里恵

写真1

第6回北九州チャンピオンズカップの熱い戦いが続く2008年11月26日、Jキャンプスタッフの宮本有里恵(Jキャンプ・通訳担当)と金子恵美子(Jキャンプ・事務局長)がトルコの車椅子バスケットボールチーム、ガラタサライスポーツクラブ・チームマネジャーのAbdurraham Guven(アブドゥラハム・グーベン)氏と同チームの中心選手の一人でスウェーデン代表のHussein
Haidari(フセイン・ハイダリ)選手に突撃インタビューを行いました。ガラタサライはサッカー、バスケットボールなどいくつかの種目のチームを抱える統合型スポーツクラブです。トルコにはこのような『総合型スポーツクラブ』という運営形態が多くあり、サッカー、バレーボール、バスケットボールなど多種目のスポーツチームが同じクラブチームの中にあるケースが多いそうです。日本でも文部科学省により、数年前から盛んになってきています。トルコの障害者スポーツ事情などとても興味深いお話をお聞きすることが出来ました!

1.ガラタサライは、総合型スポーツクラブのような大きな母体を持つスポーツクラブとのことですが、その中で車椅子バスケのチームが作られた意図はどのようなものなのですか。

(グーベン氏)
障害者の方々にもスポーツをする機会をつくりたい、ということで、車椅子バスケットボールのチームを3年前に立ち上げました。また、ガラタサライスポーツクラブ(Galatasaray Sport Club;以下、GSC)は、車椅子バスケットボールを“障害者スポーツ”というくくりではなく、サッカーやバスケットボールと同じように“スポーツ”の一つとして考えています。つまり、スポーツクラブの中で種目が一つ増えた、ということなのです。
GSCは多くのスポーツチームを抱える『総合型スポーツクラブ』の中でNo.1のスポーツクラブになるために、GSCに所属する全てのスポーツチームに力を注いでいます。
嬉しいことに、ガラタサライ車椅子バスケットボールチームは、ヨーロッパの2007/2008シーズンで、初出場で初優勝し、ヨーロッパチャンピオンという称号を獲得しました。GSCとしても、これは嬉しいことであり、またNo.1のクラブチームという目標に一歩近づいたと思っています。

2.ヨーロッパのクラブチームの中では、トルコが急に強くなったと言われていますが、これはなぜだと思いますか??

(ハイダリ選手)
チームがしっかりと体制を整えていること、そして選手が安心してプレーできる環境を整えていること。これらは非常に素晴らしいことで、我々が強くなっている大きな理由だと思っています。

3.貴チームには海外からの選手が多いようですが、トルコでは海外の選手がたくさんプレーしているのですか?(編集者補足:持ち点4.5点のJustin Eveson(ジャスティン・エバソン)は北京パラリンピック・オーストラリア代表、同じく4.5点のPeter Tucek(ピーター・トゥチェク)は同大会・チェコ代表、4点のMatt Scott(マット・スコット)は同大会・アメリカ代表、そしてハイダリ選手は同大会・スウェーデン代表)

(ハイダリ選手)
いや、今のところ、うちのチームにしか海外の選手はいません。

4.今のところは貴チームのみ海外からの選手がいるとのことですが、資金面を含めた情勢という意味も含めて、今後は他のチームも海外からの選手を獲得する可能性はあると思いますか?

(グーベン氏)
現在、ガラタサライの選手は、トルコのナショナルチームでプレーしている選手と、4人の外国人選手で構成されています。外国人選手は、チェコスロバキア、スウェーデン、オーストラリア、アメリカの4カ国から来ています(前述の通り4名ともその国の代表選手)。

基本的に、海外からの選手だけでなくトルコ出身の選手であっても、ガラタサライの選手すべてに対して住居、食事および車のサポートをしています。選手の中には、GSCのサポートも受けつつ、他に仕事に就いている人もいます。

GSCと同じように、トルコには、三大クラブといわれているFenerbahçeとBeşiktaşというスポーツクラブがあります。しかし、車椅子バスケットボールチームを抱えているのは、GSCを含む2チームのみで、GSC以外は資金的に厳しいと聞いています。私の認識では、外国人選手を抱えているのはGSCだけで、詳しくはわかりませんが、住居、食事や車といったサポートはないと聞いています。なので、他のチームの選手は普通に働いている人がほとんどだそうです。

(ハイダリ選手)
今はこのチームは国内では負けなしで特殊な状況にありますが、今後これがトルコ全体のレベルアップにつながるような、良い影響を与えられるのでは、とも思っています。

5.リクルートの方法は?

(グーベン氏)
ガラタサライの監督はトルコのナショナルチームの監督でもあり、世界中のプレイヤーリストを持っています。そのリストを基に、監督自ら世界中の選手に直接アプローチし、交渉し、リクルートします。

(ハイダリ氏)
もちろん日本の選手も、今後トルコでプレーする可能性は大いにあると思いますよ。

6.トルコにはリーグが三部あるとのことですが、それぞれ何チームずつあるのですか?

(グーベン氏)
現在トルコには約60チームほどの車椅子バスケットボールチームが登録しています。
トルコ国内のリーグは、トップ10のチームが所属するスーパーリーグと、その他レベルに応じて三部構成になっており、合計四部構成となっています。スーパーリーグ以外の三部のリーグのチーム数は、今は正確にはわかりません。

7.トルコでは健常者がプレイヤーとして参加していますか?

トルコリーグでは、健常者プレイヤーはおらず、障害者でなければ車椅子バスケットボールでプレーできません。(※健常者がプレーする?と、いう質問自体にとても驚きをみせていました。まだトルコにはそういう概念がないようです)。


インタビューを終えて:
写真2
それまで、車椅子バスケットボール界のスーパースター、カナダ代表・パトリック・アンダーソンや同じくカナダ代表のジョーイ・ジョンソンを擁するドイツが強さを見せていたヨーロッパクラブ選手権で、いきなり初出場で優勝をさらったトルコのガラタサライは、当時ヨーロッパで大きな話題となりました。

何が起きたのか?!と、非常に関心を持っていたのですが、現状は、海外のトップ選手を集めたこのチームの一人勝ち状態で、国内では当然負けなし、という状況とのこと。

オーストラリアのシーズンと、ヨーロッパのシーズンはちょうど真逆であることから、オーストラリアの選手たちは、こぞってヨーロッパでのプレーの場を求めます。
たくさんの国が集まるヨーロッパでは、ヨーロッパクラブ選手権なども存在し、世界レベルのバスケットボールが日常的に体験できるのもその理由のひとつです(シーズンが重なっているアメリカやカナダなどからも選手が流出していることは、両国の国内リーグにとっては悩ましいところかもしれません)。

トルコはその中でも、新興勢力だといえますが、国内での他チームとの格差をみる限り、今のところはまだまだ、「プレーの場」としての魅力は、他国に比べると高くはないようです。

ただ、たとえばドイツも、オーストラリア代表トロイ・サックスがドイツでプレーし始めたころは、まだまだこういった流れが始まったころであり、ヨーロッパ以外の国からの選手も多くはありませんでした。

しかし、パトリック・アンダーソンやジョーイ・ジョンソンの加入によってドイツの状況は変化し、今では複数のチームに海外からの選手が点在しています。そして、ヨーロッパクラブ選手権を制覇しようと各クラブがしのぎを削っています。

今年は、2年に一度開かれるヨーロッパ選手権の年。
2年前のヨーロッパ選手権を制したのは、今回のインタビューにも答えてくれたハイダリ選手が率いるスウェーデンでした。
Jキャンプでは今年のヨーロッパ選手権を取材に行くつもりです。大会の様子はこのホームページでもご紹介いたしますのでお楽しみに!!!


(人物紹介)
Abdurraham Guven(アブドゥラハム・グーベン)氏:トルコの車椅子バスケットボールチームGalatasaray(ガラタサライ)スポーツクラブのチームマネジャー。
Hussein Haidari(フセイン・ハイダリ)氏 : ガラタサライスポーツクラブ所属。持ち点は3点。北京パラリンピックではスウェーデン代表として活躍。

インタビュアー:宮本有里恵(NPO法人Jキャンプ 通訳担当)
金子恵美子(同法人 事務局長)
文責:金子恵美子
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