NPO法人 Jキャンプ

 レポート&コラム

No.14オーストラリア国旗ショーン・ノリス(Shaun Norris)にインタビュー
2009.01.03. 原田麻紀子

〜以下は2005年の内容です〜
◇◇プロフィール◇◇ショーン・ノリス
ショーン・ノリス(Shaun Norris)
ポイント: 3.0
ポジション: ガード
所属チーム: ウィールチェアスポーツ・
          ウエスタン・オーストラリア
(Wheelchair Sports Western Australia)
コーチ: Murray Treaseder、 Ben Ettridge
使用車椅子: RGKインターセプター
代表選手に初めて選ばれた年: 2001年
車椅子バスケを始めた年: 1995年
出身地: オーストラリア・パース
職業: 学生
年齢: 19歳

4年前に国際舞台に初めてたってから数々の大きな大会を経て確実に実力を伸ばし、今ではオーストラリアチームになくてはならない存在となった才能あふれるプレーヤー、ショーン・ノリス選手、若干19歳。今年の大阪カップでインタビューをお願いしたところ、快く承諾してくれ、長いインタビューにも丁寧に答えてくれました。若いながらも(そしてベビーフェイスとのギャップを感じさせながらも!)、しっかりとしたコメントに、彼の素質と、国、そして世界を代表する選手としての風格を感じることができたインタビューとなりました。

バスケットを始めたきっかけは何ですか?

子供のころ僕はいつもスポーツに夢中で、スポーツを通して競いあったり友達付き合いするのが好きだった。最初に水泳を始めたんだけど、6歳の時に母が、気候のすごく暑かったことと健康にいいという理由で、僕を水泳のレッスンに何度か参加させたんだ。1995年に僕らは新聞で障害者のための水泳大会の記事を見つけて、参加して自分がどれくらい出来るか試してみようってことになったんだよ。僕は金メダル3個と銀メダル2個を獲った。その大会でFrank Ponta という、ウエスタン・オーストラリアのジュニア車椅子スポーツを運営する人から声を掛けられたんだ。彼はジュニア車椅子バスケットボールチームのコーチでもあって、僕にウェスタン・オーストラリア・ジュニア車椅子バスケットボールチームへ参加しないか、さらにウェスタン・オーストラリア・ジュニアスイミングで水泳をしないかと誘ってくれたんだよ。

何か他にスポーツをしますか?また、したことはありますか?
もしあるなら、あなたはそれらのスポーツが得意ですか?
また、運動神経はいいですか?

2001 年までは水泳をやっていたよ。その時には、僕は同年代での国内記録をほとんどやぶってしまったんだ。バスケと水泳の両方を同時にやっていたけれど、どちらもうまくこなすことができていたかな。2001年に僕はどちらかを選ばなくてはならなくなって、バスケットを選んだ。車椅子テニスもするけど、レクレーションとして楽しむだけだな。全然上手くはないけど、ただプレーするのが好きなんだ。人からは、僕は何回かトレーニングを受けるだけですぐに身につけて、上手くなってしまうと言われるけど・・・実際はどうか分からないよ・・・

シーズン中はどのくらい練習をしますか?

控えている試合とかの状況によってだけれど、練習は週6回から10回ぐらい。火曜日は仕事をしているから、普段はその日以外は毎日練習か試合をしているんだ。1回の練習は、だいたい2時間くらいで、とても厳しいものだよ。

シーズン中はどんな練習をしますか?

シーズン中の練習は、シュートやプッシュ(※走り込み)の練習をして、1対1か2対2で締めくくる。
僕が一番意識していることは、全力を尽くすこと。練習に行って100%の力を出さなかったら、ただの時間の無駄になってしまう。レクレーションでやっているのでなければね。

オフシーズンはどのくらい練習をしているのですか?

このスポーツの特性とレベルもあって、本当の“オフシーズン”っていうのはないかな。国内リーグが終われば、地域リーグにジュニアやローラーズ(※オーストラリア代表チームの愛称)の試合と練習があるからね。

オフシーズンにはどんな練習をしますか?

次の大会まで時間があるなら、ジムでのウエイトトレーニングをするのと共に、練習中のプッシュ練習も増やすんだ。シーズンや次の大会に向けて、さらに自分の体を万全な状態にするためにね。そしてシーズンに入ったら、あとはその体を維持するように心がけるんだよ。

練習中、気をつけていることはありますか?

練習は試合でのプレーを具体的に頭に描いていく時間だ。でも、同時に新しいことやアイデアを試してみる時間でもある。それが全てうまくいくわけではないけど、それこそが練習であり、だからこそ練習するんだ。自分の役割に関係する練習をバランスよく取り入れることも僕が意識していることだよ。練習中、ボールハンドリング、シュート、プッシュはどれも意識している。それらは僕が試合中行うプレーの大半をしめるものだから。練習中に僕はいろいろなことを考えるけど、何を考えるかは人によって変わってくると思う。それは個人の(練習に対する)考え方がみんなそれぞれ違うものだからね。でも、僕が今言ったことは、練習をする際の一つのいい目安にはなるんじゃないかな。それから、メンタル(※精神面)50%、フィジカル(※身体面)50%というのも大切だよ。

試合中、気をつけていることはありますか?

他のチームの戦略を学ぶことは、試合をするとき最も重要なことだ。でも、それを知っているからといって、その相手に勝てるかといったらそうとは限らない。だけど、とにかく何度も何度も挑戦していかなくちゃいけないんだ。コートの外から試合を見ることは、コートで何が起きているかという全体像を見るのにすごくいい方法だよ。僕は、コート上にいるときもいないときも、それに(自分の試合ではないとき)コートサイドからでも意識して見るようにしている。プレーするときに気をつけようとしてることは本当に様々でたくさんあるよ。もちろん同時に全部なんてできないけどね!あはは・・・。

自分の長所/強みはなんですか?

自分でこれが強みだって決めたり、人に言うのは難しいな。正直、自分のどの部分も強みだとは言いがたいし。僕の持っているものは全てまだ発達段階にあって、だからより上達しようと一生懸命努力しているんだ。ただ、とても若い年齢でローラーズ(※代表チーム)入りできたことは僕の強みだと、あるいはだったと言えるよ。16歳で自国のためにプレーすることができて、この4年間で僕は本当にいろいろなことを学んだ。この早いスタートが、将来さらに僕を上達へ導いてくれるはずだよ。

自分の弱点はなんですか?

メンタルに弱さがある。一つもミスを犯さずに一試合プレーすることが僕の目標なんだ。現実にそんなことは絶対無理だとは分かっていてもね。時々、自分自身をコントロールできなくなってしまうこと、それから自分勝手に少し速くプレーし過ぎてしまうこと、この2つが弱点といえるだろうな。

自分より大きくて上手な相手プレーヤーたちの間をどうしてそんなに簡単にすり抜けて
シュートが決められるのですか?

さあ、それは分からないけど、いつも人からは僕はキーへのカットが上手いと言われるよ。でもそれは、昔から僕がいつも出来ていたことなんだと思う。カットする正しいタイミングを見つけることが一番難しくて、でも中に入ること自体は簡単かな。だけど、シュートを決めるのは時に大変だよ。

感動した、あるいは思い出深い試合はありますか?

レイクショアで戦った対カナダ戦かな。今はもうどんな試合だったかははっきり覚えてないけど、でも多分あの試合が今までの中で一番感動的だったよ。(※2004年の夏にアメリカのレイクショアで行われた大会での試合と思われます)

バスケットを始めてからこれまでで一番嬉しかったことは何ですか?

今の自分にまで成長してきたこと、車椅子バスケの一つ一つのレベルを登ってきたこと、こんなステップ全てが自分の人生の中での一番の幸せだよ。

一番辛かったことは?

多分、そういうことは忘れようとしてるんだろうな、だって何も思いつかないから・・・あはは。

現在、何か自分にとっての目標や夢はありますか?

僕はいつも、次がさらにベターになるようにと努力している。それが、僕の目標なんだ、一度に一歩ずつ進んでいく。自分がパーフェクトになることは決してないと思うけど、それでもハーデストな(※=hardest 最大限の)努力をしているよ。

オーストラリアのバスケットボールの環境に満足していますか?

ウェスタン・オーストラリア地域内、そして国内リーグはとてもタフな戦いで、その競争性には何も不満はないよ。そういう環境でプレーできることはとても有益なことだと思ってる。一つだけ困難なことは、競技を続けるうえでの金銭的な問題かな。僕も含めてアスリートに対するさらなる資金の供給が絶対的に必要だ。でも、障害者アスリートにとってそれはとても難しいことなんだ。

車椅子バスケを続けてきた中で得た友人たちは数知れない。そんな友人たち皆のことをありがたく思うし、
彼らがいてくれることは本当にうれしく思うよ。彼らが僕をここまで育てあげてくれたし、逆に僕も彼らに人生の明るくて楽しい部分を与えられればいいと願っている。彼らが僕を助けてくれて、僕も彼らを助けるんだ。

尊敬する、あるいは一緒にプレーをしてみたいプレーヤーまたコーチはいますか?

僕の2人のコーチ、Murray Treseder と Ben Ettridge の両方ともを僕は尊敬している。僕と僕のチームに与えてくれたたくさんの知識と彼らの努力は素晴らしいものだよ。彼らなしでは、確実に今の僕はここにいないさ。

でも僕が最も感謝しているコーチは Frank Ponta だ。彼はジュニアバスケットボールで教えているから、彼から教わったのは車椅子バスケの基礎だけだけど、そもそも彼が僕を見出して声を掛けてくれなかったら今の僕はないからね!

日本にいるあなたのファンと若いプレーヤーたちにメッセージをお願いします。

このスポーツを僕がプレーする理由は、このスポーツが大好きだから。このスポーツに費やした多くの血と汗と涙が、僕を今日あるレベルにまで成長されてくれたんだ。僕は最高のプレーヤーではないけれど、
自分の最高を目指して努力をしている。練習を共にしていく熱心なパートナーを持つことは、このスポーツをする上であなたが持つどんな目標へ向かうためにも大きな助けとなるはず。
もし、代表選手になりたいと思うのなら、たくさんのトレーニングを重ねなくてはならないでしょう。でも、もしそうするのであれば、100%の力を注ぎこんでください。

コーチが教えてくれるのはバスケをするための道具であって、それをどう使っていくかはあなた次第です!

 

筆者紹介
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