NPO法人 Jキャンプ

 レポート&コラム

No.15中華人民共和国イリノイアスリート、北京での活躍
2008.11.10. 原田麻紀子

Jキャンプに何人もの講師陣を送り出しているイリノイ大学の車椅子スポーツプログラムは、北京パラリンピックでもそのレベルの高さを証明しました。

先シーズン(2007−08)のアスリート、スタッフの中から、バスケットボールは11人、陸上は5人が参加。その中で、バスケは4つのメダル(女子アメリカ、ドイツ、オーストラリア、男子カナダ)、陸上は実に11コ(世界記録更新1つ)のメダルを獲得。

過去の卒業生と今年の新入生1人を含めた場合は、なんと30人のアスリートとスタッフが参加。その中で獲得したメダルの数は24コ(金6、銀11、銅7)。参加した147カ国と比べた場合、メダル合計数ではギリシャと並ぶ17位、金メダルの数ではチェコと並ぶ16位に位置することになります。さらにイリノイの陸上アスリート(全員アメリカ人)で、アメリカの陸上チームが獲得したメダルの半分を獲得したのです(アメリカチーム合計28個中、14個)。

もちろん自分の結果に満足した人もいれば、そうでなかった人もいるはず。でも、すべての選手がハイレベルな素晴らしいパフォーマンスを披露したことは確か。イリノイ大学のプログラムの質の高さを映し出したといえるのではないでしょうか。

キャンパスに戻ってきた選手とスタッフたちに久しぶりに再会し、少し疲れた、でも安堵感あふれる表情に、こちらもほっとし、笑顔がこぼれました。全ての力を出し切り、無事に帰国した彼らの活躍を心からたたえたく思います。

さて、ここでいくつか印象に残ったエピソードを。

車椅子バスケ、男子準決勝でアメリカを2回の延長でやぶったカナダ。そのチームを率いた、イリノイ大学男子車椅子バスケボールチームヘッドコーチのマイク・フログリーは、金メダルを逃したことを惜しみながらも、カナダチームの選手たちをたたえていました。誰もが息を飲んだアメリカ戦。2002年のゴールドカップ、準決勝のカナダvsアメリカと本当によく似たシナリオ。でも、今回のカナダは、2002年に犯した過ちをしっかりと修正し、エンドゲームシチュエーションでは、驚くくらい落ち着いてゲームを進めることができたといいます。それは、普段の練習でエンドゲームシチュエーションの練習を重ねてきたからこそ。特にコーチのマイクは、イリノイ大学でも毎練習やってきたので、いつも通りにコーチングをするだけでよかったと語っていました。試合後、中心選手であるジョーイ・ジョンソンは、マイクにこう話したといいます。今までバスケをやってきた中で受けた最高のゲームコーチングだった、と。

もう一つ印象的だったのは陸上アスリートたちのコメント。
イリノイのヘッドコーチ、アダム・ブリクニーは、昨年、USオリンピックからParalympic Coach of the Yearに選ばれた若手の名コーチ。本人もアスリートであり、今大会にも参加をしました。彼からコーチングを受けた4人の選手は、全員がメダルを獲得。そして、全員が洩れることなくメディアのインタビューに対し、まず最初にアダムの功績をたたえ、感謝の意を表しているのです。自分がコーチをした選手がメダルをとるだけでも素晴らしい名誉だと思いますが、その選手全員にその功績を公にたたえてもらうなんて、コーチ冥利につきるのではないでしょうか。

マイクが戻ってきた初日、イリノイ大学の車椅子バスケットボールチームの選手たちの顔には、安心感と笑顔とやる気の表情があふれていました。

世界トップレベルのコーチングが毎日受けられる大学での車椅子スポーツプログラム。ここからまた、何人の選手が世界の舞台にはばたくのでしょう。


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